- 2007-09-09 (日) 22:38
- eco
チェルノブイリの森―事故後20年の自然誌
著者/訳者:メアリー マイシオ
出版社:日本放送出版協会( 2007-02 )
定価:¥ 2,310
単行本
ISBN-10 : 4140811811
ISBN-13 : 9784140811818
1986年4月28日、チェルノブイリの原発で爆発事故が起こり、
一帯は放射能で高濃度に汚染された。
事故以来、現場から30km圏内は居住禁止区域となり、
「ゾーン」と呼ばれている。
この本は、事故後その「ゾーン」に入り、
経過を追い続けているジャーナリストのレポート。
事故当時、原子炉から推定500万から2億キュリーの放射能が放出され、
10キロ圏内の樹木は葉緑素を破壊されて赤くなり、枯れていった。
そして、住民はすべて強制避難させられ、村は無人となった。
ゾーン内で取れた作物や、森のきのこ、野生のベリーなどは、
今でも採集を禁止されている。
しかし、意外なことに、20年後の「ゾーン」は、
映画の中の核戦争後のような荒涼とした世界ではなく、
数百種類の動物が、人間に邪魔されることのない自由な天地で生きる、
”サンクチュアリ”のようになっているのだという。
人が住まなくなった土地は、瞬く間に原野→森と還り、
ヘラジカ、オジロワシ、オオヤマネコ、ヒグマ、オオカミなど、
ヨーロッパ全域で絶滅危惧種に指定されている動物達さえも、
繁殖を確認されているらしい。
また、元々あった広大な湿地帯が復活し、
今では周辺地域から様々な種類の野鳥が飛来し、
一大コロニーを形成している。
もちろん、現地の放射能の汚染濃度は年々減少しているとはいえ、
まだまだ、通常の十数倍という高いレベルを示しているし、
食物連鎖による放射能の濃縮も進んでる。
けれど、さらに意外なことに、
汚染地域の動物には、放射能の影響と見られる、
変異体がほとんど見られないらしい。
放射能に抵抗力のある個体が自然淘汰されて、
生き残ったものだけが繁殖してきた結果ではないかと言われている。
人間が作り出した史上最悪の環境も、
人間さえ存在しなければ、
自然はやすやすと乗り越えることができるんだろうか...
発電所の10キロ圏内に落下した、
プルトニウム239の半減期は二万四千百十年!
想像を絶する期間、この区域に人間が住むことはない。
皮肉なことに、「ゾーン」は地球上で最後の
野生動物の楽園として残ることになるかもしれない。
この本を読んで、もう一つわかったこと。
それは、「”チェルノブイリ”は”苦ヨモギ”じゃない!ってこと」
”チェルノブイリ”という地名が、黙示録にある世界の終末を表す”苦ヨモギ”のことだっていうのは、
いろんなところでまことしやかに言われてきて、わたしもすっかり信じていた。
”チェルノブイリ”という地名の元になった草の学名は「アルテミシア.ウルガリス」。
それに対して、”苦ヨモギ”は学名「アルテミシア.アブシンチウム」、
現地ではポリンと呼ばれており、似てはいるが別種の植物なのだった。
どちらも、耐寒性の多年草で、苦く強烈なにおいを持つ薬草なので、
ウクライナ語から訳されるときに混同されて、世界的に広まってしまったらしい。
なんでも勝手に、オカルトな終末論にリンクさせるカルト連中のガセに、
今まではめられてた自分がちょっと恥ずかしかった;;
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